アナグマの事情
オレには1つ下の妹がいる。これがいまだ独身なもんで、両親は気をもんでいる。特に母親なんぞはオレの顔を見るたび「誰かいい人いないかおうおうおう」とものすごい勢いで迫ってくるのでちょっと困るのである。リンダ困っちゃう。別に本人が気にしてないんだからいいじゃないかとオレは思うのだが。先日会ったときも「誰か紹介してよ」としつこく迫ってきたので参ってしまうわけである。う~ん、まいっちんぐ。
先週だったか、うっしー(ヨメ)と話をしている時、この話題になった。で、オレの高校時代の友人はどうかというわけである(ちなみにうっしーはオレと同じ高校の同じ部活の1コ下)。
「そういえばあの人はどう?アナグマに似てる人」
「ああ、アナグマ(笑)。どうって何が」
「性格とか」
「性格はねえ、物静か」
「それから?」
「えーとあとは、ガリ勉」
「それで?」
「終了」
「それだけ?」
「うん」
「ってあんたバカ?自分の友達の話でしょ!それなのになんで『性格は?』『物静か』『それから?』『ガリ勉』で終了すんのよ!もっと色々あんでしょ友達なんだから」
「えーそんなこと言われてもなあ。んー…そうだなぁ。まあ女の子と軽快にトークするタイプではなかったね。オレも人のことは言えないけど」
「まったくだよ。自分の妻ともロクに会話ができないやつだよ」
「まあやつも今は電通マンだから合コンとかで鍛えられてるかもしれないけど」
「そいでアナグマ彼女いるの?」
「さあ…?でも電通マンだから合コンでモテモテかもしれないよ」
「でも合コンじゃなくて別の出会いを求めてるかもしれないよ」
「さあ…?どうだろ?」
「それはいいけど、もっとほかにないの?アナグマのいいひとぶりを示すハートウォーミングなエピソードとか」
「そう言われても性格なんてよく知らないしな…」
「なんでよ!友達でしょ?」
「だいたいヤツとは1年のとき同じクラスだっただけで2、3年は違うクラスだったし」
「そうなの?部活は?アナグマは何部だったの?」
「帰宅部」
「それでガリ勉してたわけ」
「そうそう」
「アナグマどこの大学なんだっけ」
「東大法学部」
「ああ、なるほどね。それはわかったけど、じゃあワタナベ。は何でアナグマと友達になったわけ?」
「そりゃあさ、あれじゃねえかな、えっと…。…あれ?何でだろ?」
「何でだろうじゃないでしょ!おかしいんじゃないの」
「んー謎だ。…あ、わかった。そうそう、ガリ勉仲間だったんだよ、多分」
「嘘つき。高校のとき勉強なんかしてなかったでしょうよ」
「え、そ、そうかな…。しかしそれはそれでひでえ言われようだな」
「だってそうじゃない」
「…あ、わかった!あれだ、オレとアナグマは“夢を語りあった仲”ってやつだったんだよ」
「なにそれ」
「そうそう、あいつさ、『オレは総理大臣になる』とか言ってたんだよ」
「あ、そういえばそれ聞いたことある気がする」
「そうそう『総理大臣になるにはやっぱ自民党に入らないとダメかな』とか相談されたりしてさ」
「ふーん。で、ワタナベ。は何の夢を語ったわけ?」
「オレはさあ『アナハイムエレクトロニクスに入ってガンダムを造る』かな」
「ふーん…」
「そいでさ、あいつそれをずっと覚えてやがってさ、ウチの大学の工学部って昔は2年になるときに進振りがあったんだよ。オレが年賀状とか暑中見舞いとかに『金属系になりました』とかって書くと『ガンダムの合金を造るための学科ですね』とか返事が来るわけ」
「ふーん」
「それからオレが前の会社(半導体メーカー)に就職したときも『ガンダムの回路を造るための就職ですね』って返事が来たわけ」
「ふーん」
「で、こないだ特許事務所に転職したときも『ガンダムの特許を取るための転職ですね』とか年賀状に書いてくるわけよ」
「そう。今だにそんなこと書いてくるってことはよっぽど嬉しかったんじゃない。ワタナベ。と夢を語りあったのが」
「んーそうかなあ」
「そうだよ。ところで、アナグマなんて名前だっけ」
「F本」
「ああF本くんね」
…てか妻よ、オレF本がアナグマに似てるなんて一言も言ってないんだが。オレの友達に勝手にあだ名つけんなよ!まあ、アリクイに似てるとは言ったが。って…「ア」しか合ってねーよ!
しかしまあ「アナグマ」でF本のことだってわかっちまうオレも異心伝心というか夫婦愛というかサイキックというかなんだかなあという感じがしなくもない。ところで、アナグマってどんな動物だ?
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