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2004.11.24

明るい明日のために

 目を覚ますと日はもうだいぶ高くなっていた。僕はベッドの上で上半身だけ起き上がった。隣では妻がまだ寝息を立てている。僕はベッド脇の時計にチラッと目をやった。まずい、もう行かなくちゃ。僕は妻を起こさないようそっとベッドを出ようとした。そのとき、寝ていたはずの妻の右手が僕の左手を掴んだ。

「いかないで」妻は半ば夢の中で懇願している。「そばにいて」

 僕は妻の姿を黙って見つめていたが、やがて右手で妻の前髪をかきあげた。妻は相変わらず寝息を立てたままだ。困ったな。もう行かなくちゃならないのに。

 僕は妻の右手をそっと外そうとした。しかし、それに逆らうように妻は右手に力を込める。

 ああ妻よ。君の気持ちは分からないでもない。だが耐えてくれ。僕はもう行かなくちゃならないんだ。男にはそういうときがあるんだ。誰だってそうなんだ。だからその手を離しておくれ。

「私が代わりに行ってあげるから」。妻は目を閉じて意識朦朧のままそう言った。起きているのか寝ているのかよく分からない。

 おお妻よ。君の気持ちはとても嬉しい。だが君では駄目なんだ。冷たい言い方だけど、君じゃ僕の代わりにはなれないんだ。僕が自分で決着をつけなきゃならないんだ。これは僕個人の問題なんだ。

 僕はちょっと力を入れて妻の手を振りほどこうとした。妻はますます右手に力を込めた。

 分かってくれ妻よ。これは僕が自分で越えなければならない壁なんだ。これを越えなければ明日はやって来ないんだ。知ってるかい、あしたは「明るい日」と書くんだぜ。このままじゃ真っ暗さ。僕達に明るい未来はやって来ない。

 僕は心を決めた。英語で言うとmake up my mind。そう、意を決したんだ。おい!起きろ!起きろよbaby!今日はいい天気だ。僕は妻の体を揺り動かした。

「ん…何?」

 妻が目を開けて僕を見つめる。その目は深く澄んでそしてどこまでも真っ直ぐだ。

 ふう。僕は深く息を吸い込んで言った。

「手を離してくれないか。ウンコしに行きたいんだ

雑文

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