【雑文】友情
なんかまあ以前書いたかもしれないが思い出したのでもう一度。
オレは幼少のみぎりから、人の目を気にしないで生きるというロックな人間であった。人の目を気にして生きるなんてくだらないことさ、という真理を生まれながらにして会得していたのである。そしてオレは、幼い頃から実際にこれを実践していたのである。人の意見に流されず、自分の意志を貫き通す。そして自分の行動に対して誇りを持ち、後悔したり恥じ入ったりすることはない。
そして周りの人間も、オレのことをそういう人間だと認めていた。
あれは、確か中学2年の夏のことだ。
夏休みのある日、部活(陸上部)の練習もほぼ終わりに近づき、オレは仲の良い友人数人とクールダウンのストレッチをしていた。ストレッチが終わり、下駄箱に向かっててくてくと歩いていると、T君が駆け寄ってきた。
「なあ、ワタナベ。」
ふとT君がいつになく真剣な面持ちで話し掛けてきた。
「ん?」
「あ、いや、その、さ…」
なんだか様子が変だ。なにやらタダならぬ事態のようである。
「…相談があるんだけど」
「うん?」
「あ、あのさあ、俺、マジだから絶対笑うなよ?」
「うん。なんだよ」
「あ、いや。…俺…、俺、痔かもしれないんだ…」
「は?」
「だから、痔かもしれないんだよ、俺」
「…それで?」
「でさあ、新聞とかによく広告載ってんじゃん。『ぢに効きます』みたいなさ…」
「ああ、ヒ○ヤ大黒堂」
「そうそうそれそれ。んで、あれ、『無料のサンプル差し上げます』って書いてあるんだけどさ、俺欲しいんだよ。でも、親にバレたら恥ずかしくてさ、ワタナベ。、代わりに取り寄せてくれない?こんなこと頼めるのは、ワタナベ。しかいないんだよ」
「ああ、いいよ」
「ホント?やっぱワタナベ。ならやってくれると信じてたよ。サンキュー」
そうなのだ。オレは痔に悩む友人のためなら、「ヒ○ヤ大黒堂の無料サンプルを取り寄せる」ことなどなんら恥ずかしがらずに実行する人間だと思われていたし、実際にそうだった。なによりT君のためだ。断る理由など何もなかった。
…まあ結局この件はT君が後日「どうやら痔じゃなかったみたい」ということで実行には移されなかったのだが、(自分で言うのもアレだが)他人からオレがどういう人間だと思われていたかということを示す出来事として、オレの灰色の蛋白質メモリーの奥底に記憶されたのである。
で、そんな記憶がどうしていま引っ張り出されたかということは絶対に秘密である。秘密ったら秘密なのだ。
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