« 渡辺さんごめんなさい。 | トップページ | ヤバイぜbaby »

2007.02.07

君が僕を知っている

あれは、まだ学生の頃、妻と結婚する前の話だ。もう付き合いはじめてから何年も経っていた。卒業も迫り、2人の将来についていやでも考えなければいけない、そんな頃の話だ。

***

「君に伝えたいことがあるんだ」

駐車場に入れた車から一足先に降りてアパートに向かっていた彼女を小走りで追いかけながら、僕はそう言った。

「なに?」

彼女は立ち止まってこっちを振り返った。12月の冷たい夜の空気に、彼女の吐く息は白く光っていた。

僕は彼女に追いつくと、一瞬立ち止まった後そのままアパートに向けて歩き始めた。彼女は僕の左側で並んで歩き始めた。

「君に伝えなきゃならないことがあるんだ」

僕はもう一度言った。

「…」

僕は言葉に詰まってしまった。言いたい事はちゃんと頭の中で整理してまとめていたはずなのに。いざ本人を前にするとどうやって話し始めればいいのか、考えていたことは頭の中から何処かへ飛んでしまった。

「何よ。早く言いなさいよ」

彼女は僕のちょっといつもと違う雰囲気を感じたのか、僕の緊張をほぐすように少し悪戯っぽく笑って言った。

「…」 

でもやっぱり僕はうまい言葉が見つからなかった。

「あ、オリオン座」

彼女はふと話をそらすように言った。時計の針はもう12時を回り、辺りに人影は見えない。晴れた夜空にオリオン座が美しく輝いていた。

「あのさ」

僕は立ち止まり、意を決して口を開いた。

彼女も立ち止まり、僕をじっと見つめていた。

僕は両手を開いて肘を曲げて肩幅くらいに広げた。ちょうど、「小さく前へならえ」と同じような格好だ。

「あのさ、俺、今日このくらいの…」

僕の言葉が完全に終わらないうちに彼女は言った。







「…うんちが出たのね?」

何から何まで君が、僕のことすべてわかっていてくれる。

雑文

|

« 渡辺さんごめんなさい。 | トップページ | ヤバイぜbaby »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42985/13828101

この記事へのトラックバック一覧です: 君が僕を知っている:

« 渡辺さんごめんなさい。 | トップページ | ヤバイぜbaby »