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2007.07.31

責任

今日はちょっと、昔話をしよう。学生の頃の話だ。

オレいた研究室では、毎年秋に温泉旅行に行くのが慣例となっていた。

D3の秋のことである。例年通り、温泉旅行が計画された。金曜の夕方に出発して、車で1時間ほどの温泉に1泊するというスケジュールである。何台かの車に分乗していくのだが、出発は金曜の夕方であり、まだ仕事の終わってない人もいるので、仕事の終わった人が3、4人集まったところで順々に出発だ。

オレなどは当然さっさと実験を切り上げて出発の体勢に入ったので、後輩2人とともに最初の車で温泉に向かい、当然最初に宿に到着した。

皆がそろったところで宴会が始まるのであるが、まだ当分は全員揃いそうにない。そんなわけでオレは後輩を引き連れ、宴会前にひと風呂浴びることにした。オレたちはタオルを持って、先ほど宿のおばちゃんが「こちらが大浴場です」と指差した方向に歩いていった。大浴場はすぐに見つかった。

ふと見ると、入り口に看板が立てかけてあった。そこには

 “ただいまの時間は混浴となっています”

と書かれていた。

…。

おいおい。これは聞いてないぞ。

「わわわわワタナベ。さん、ど…どうしましょう?“混浴”って書いてありますけど…?」

後輩のT君などはすかり動揺してしまっていた。

「気にすることはない。“混浴”って書いてありゃ普通は男しか入らんだろ。それにまだ時間がちょっと早いから、きっと誰もいないよ」

オレは堂々と扉を開け、脱衣所に足を踏み入れた。しかし、予想に反して3人ほど先客がいるようだった。し、しかも…、あの脱衣カゴの最上部に置かれているのはぶぶぶぶぶブラジャーではないか?まままま間違いない。あれはブラジャーだ。ということは女性が中にいるということだ。これは予想外の展開だった。

「どどどどうしましょうワタナベ。さん、女の人がいますよ」

後輩のT君はかなり動揺しているようだ。しかし、オレはいつでも冷静沈着だ。そして先輩として威厳のあるところも見せなければならない。

「構わないよ。ここは混浴なんだから、当然我々にだって入る権利があるはずだよ」

「そうだ、一応、『入ってもいいですか』って聞いてみるのはどうでしょう?」

慎重な性格のW君がそう提案してきた。

「うん、それはいいアイデアだな。当然『いいです』って答えが返ってくると思うけど、マナーとして一応聞いてみるべきかもしれない」

「じゃ、じゃあワタナベ。さん聞いて下さいよ。一応年長者ですから、ほら」

ふ…参ったな…。どうもオレは後輩からの信頼が厚いようだ。アチチアチチ。よし、ここでちゃんと後輩の信頼に応えるのが年長者としての責任というものではないだろうか?そうだ、オレは信頼に応えなければいけないのだ。

「いいよ」

オレは後輩の信頼に応えるためにそう言った。くれぐれも言っておくが、オレがこの役を引き受けたのは後輩の信頼に応えるためであって、それ以外の他意は少しもない。いや全くない。これっぽっちもありゃしない♪

オレは堂々と脱衣所から風呂場へと通じるドアを開けた。湯煙の向こうには確かに女性が数名いた。

「すいませ~ん♪、入ってもいいですか?」

しかし、返事は予想外のものだった。

「えっ…!?こ、困るんですけど…」

「あ、そ、そうですか」

「困る」といわれてはどうしようもない。オレらは渋々あきらめて、大浴場を後にした。

「なんだよ、混浴なのに『入ったらダメ』ってどーゆーことだよ」

「そーだよなー。おかしいよ、あの人たち」

「まあ、しょうがないから別の風呂がないか聞いてみよう」

オレらはフロントに向かい、宿のおばちゃんに聞いた。

「あのー、さっき大浴場に行ったら先に女の人が入ってて、『一緒に入ってもいいか』って聞いたら『ダメ』って言われちゃったんで、どこか他に風呂はないですか?」

「ええ?大浴場は今の時間は女風呂ですけど!?」

「え?だって入り口に“混浴”って看板が立ってましたよ」

「あら、それは間違いですね。さっき“女風呂”って看板をかけたんだけど…。誰かが間違えて看板直しちゃったのかしら…」

ちょ、ちょっと待て。ほんじゃー女風呂に侵入してって、「入っていいですか?」って聞いたオレは、ただのヘンタイじゃないか!どーしてくれるんだ!もう少しで入っちまうところだったじゃねーか!!

雑文

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