白い服の男/星新一
小学5年~中学生くらいの頃、星新一にハマっていた。オレの親はあまり小遣いをくれなかったが、オレは少ない小遣いを貯めて星新一の文庫本を買いあさった。
で、オレが最初に読んだ星新一の本がこの「白い服の男」だ。母方のばーちゃんに買ってもらった。
ばーちゃんは、ウチから電車で1時間半くらいのところに住んでいた。ほどほどの近さだったので、オレは月に1回くらい祖父母の家に遊びにいっていたと思う。
小さい頃はもちろん母親と一緒に出かけたが、小学校高学年になったころからひとりでもばーちゃん家に出かけるようになった。
最寄り駅からばーちゃん家までは歩いて15分くらいだった。オレはひとりでも歩いてばーちゃん家にたどり着けたが、気が向くとばーちゃんは駅まで迎えにきてくれた。
改札を出て踏切を渡ると小さな商店街があった。
「ワタナベ。、なんか本買ってやろう」
ばーちゃんは何の前触れもなく言うと、商店街の小さな本屋に入った。薄暗い照明に所狭しと並べられた本棚、店主のおじさんがひとりで店番をしてる、そんな店だった。
オレは小さい頃、読書少年で、学校の図書館や市立図書館で本を借りまくって読みまくっていた。すでに、いわゆる児童書みたいな本では物足りないカラダになっていた。
ばーちゃんはそのへんの事情は多少理解していた。店主のおじさんをつかまえるとこう言った。
「この子に本を買ってやろうと思うんだけど、何かいいのないかしら。小学5年生なんだけど本がとても好きなんで、大人が読むようなものでいいんだけど」
店主のおじさんは少し考えてから、一冊の文庫本を手にしてこう言った。
「星新一なんかいいんじゃないですかねえ。読みやすいし、エログロみたいのもないから小学生に読ませても問題ないと思いますよ」
そんなわけで、ばーちゃんは、店主のおじさんが手に取った「白い服の男」を買ってくれた。
オレは当然にショートショートなんてジャンルの小説は知らなかったが、シンプルな文章とヒネリの効いたオチに一発でのめり込んだ。
いやあ、あれはもう20年以上前のことなんだな、これが。
時の流れというのか、星新一は97年に、ばーちゃんは2003年に死んでしまった。合掌。
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